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広幅服地や靴下など絹になじみの薄い業界の方に「シルクは堅牢度が低いからなあ〜」とか指摘を受けることがあります。でも必ずしもそれが正しい意見ではありません。

(1) ちゃんと精練染色した絹糸は、他の天然繊維と比べて遜色ありません

日本でも代表的な検査協会の生地品質基準(インナーを除く)を例に説明します。

試験項目
品質基準
精練染色絹
耐光(カーボンアーク灯光法) 変退色3級以上
洗濯(毛・絹・アセテート A-1法) 変退色 4級
○一部△
洗濯(その他 A-2法) 汚染 2-3級以上
○一部△
汗(A法) 変退色 4級
汗(A法) 汚染 2-3級以上
乾摩擦堅牢度 3-4級以上
湿摩擦堅牢度 2級以上
○一部△
ドライクリーニング堅牢度 変退色 4級
ドライクリーニング堅牢度 汚染 3級以上

(2) では何が問題か?精練不十分なまま染色されてませんか。
精練の代わりに石鹸でのソーピング程度で染色工程に入りますと、染料が充分糸に染み込まないまま無理に色が付いてしまいます。

精練とはセリシンを落として絹本来の光沢を出すことと、染着座席を作ってあげることです。繊維の一番奥深くまで染料が浸透することで、色の深みも出ます。また、残留セリシンはセリシン溶融温度の70〜80℃になりますと、不安定になり色落ちを加速させます。 以上の点から、染色時は充分な精練が必要です。

(3) 野蚕系の糸とトップダイドの絹紡、紬糸は堅牢度が低い色がある野蚕系の糸は残留セリシンが多いので、その分染着座席が少なく染まりにくく色落ちもしやすい。(そこで弊社では野蚕糸の場合は「膨化酵素練(晒)」という精練をお奨めしています。

(別欄参照))また、トップ染の糸も5%〜10%除去できないままに糸に紡績するため、濃色、赤系など上記基準をクリアできない色もある。 ソリッド染の絹糸はほぼ上記基準をクリアしている。

(4) 湿摩擦堅牢度が上がらない理由として、絹紡糸や紬糸などは特に繊維が柔らかくて平行度が高く、抜け落ち毛羽立ちがしやすいために、微細な繊維が基布に付着しやすいこともある。しかし、消費者に渡ってからのことを考えると、それは言い訳にはなりません。


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