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ようやくここで、絹を製品に使うメリットを紹介することにします。なんで勿体ぶってるんだよ〜って聞こえてきそうですが、後ろにもってきたのは、絹の素晴らしさは今更言うまでもなく、身につければ誰しも分かってもらえますんで、消費者の方が一番よくご存知だからです。

絹素材を扱っていただく場合、デメリット説明を7;メリット説明を3位の割で入った方が無難です。いちいち説明せずとも、感覚でわかってもらえるはずですから。

(1) 吸湿・放湿性が優れている

精練工程で、絹の繊維の中に無数の空隙が生じますので、まず湿った空気を十分に含みます。シルクは分子構造上−OH基、−NH2基、−COOH基などの親水基が多く、その湿った空気をよく吸収してくれます。また余分な湿気は外へ放湿してくれます。

(2) 保温性が良い

精練工程で生じた空隙、絹繊維の不均一性が多くの空気を保持することになり、保温性が良い。また、接触温冷感はウールほどではないが、吸湿すると温度が上がりその温度を保持するため、暖かく感じます。

(3) 肌当たりが優しい

 カシミヤや海島綿がいくら肌触りが良いと言っても、絹には及びません。それはまず、一本の繊維の太さが2drと細いことと、長繊維短繊維にかかわらず、フィブリル構造になっていて、毛先が尖らず開繊しますので、皮膚擦蝦性が小さくて済むのです。但し絹繊維自体は非常に強いので、強くこすり過ぎると肌を傷めますのでご注意下さい。

(4) 発色の良い染め上がり

絹の染着性が良いのは、精練で出来た空隙が染料を繊維の奥の奥まで案内し、そこで待っている染着座席が染料をきちんと定着させるからです。(1)の分子構造で述べたように、染着座席のバラエティが豊富で、酸性含金染料、直接染料、反応染料、塩基性染料などの化学染料ばかりでなく、草木染の染料なども染め付けはよろしい。大きな分子量の染料が定着する大きな椅子も用意されています。

表面だけではない深い染色性と絹独特のフィブリル構造により、美しく深みのある色合いが表現できるのです。

(5) しなやかな繊維の風合いとドレープ感

ドレスには絹のドレープ感はどうしても必要です。化合繊は絹のドレープ感を目標にほぼ実現していますが、絹繊維はコシがあってしかも柔らかい、これは強さの部分(結晶性の部分)と柔らかさの部分(非結晶性の部分)とが混在しているからです。

これらは織物の組織や密度によって、コシを強調したり、柔らかさを多分に引き出したり出来ますが、いずれの場合でも、絹独特の硬すぎず柔らかすぎずというしなやかさが表現されます。

(6) 光沢、深み

絹独特の光沢は、どこから来るのでしょう。光は反射したり屈折したり透過したりしますよね。家蚕糸の絹繊維の一本一本は、ほぼ三角プリズムのように三角断面をしています。そのまま反射する光は一部で、透過する光、屈折をする光、内部で二次反射する光、ミクロフィブリル構造の中でそれを繰り返している内に拡散したり、吸収してしまう光などが相まって絹独特の深みのある光沢が出来上がるのです。

(7) 絹鳴り

練絹の布や糸を手で揉むと、新雪を踏みしめたようなキュッという音がします。これは絹繊維の中でもよく精練した長繊維に限ってあらわれる"絹鳴り"です。一種のきしみ音で、揉むときに@隣合っている絹同士がギュッとくっつき、Aそれが横滑りするときにきしみ音が生じるのです。紡績糸では滑りがスムーズでないために、不十分な精練ではセリシンが残り、それぞれ絹鳴りしなくなります。また、柔軟仕上げでも鳴きません。


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